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JOKERS「5.Izabella」編集後記

※本編のネタバレを含みます。

 

声劇企画JOKERS主催のこひらみかんです。

この度はボイスドラマ『JOKERS』最終話までをお聞き頂き、ありがとうございました。

JOKERSラジオのキャストフリートークは聞いて頂けましたか?

演者さんのお話についてはあちらで語っておりますので、ここでは最終話である5話についての私こひらの企画・脚本・編集目線での裏話を書いていこうと思います。

お付き合いいただける方はよろしくお願いします。

 

●脚本について

まず、脚本執筆過程についてのエピソードを少し。

5話の大まかなあらすじについては元々考えていたのですが、いざ書き起こしてみると自分でもよくわからない感じになってしまい、一度プロットを立て直すことにしました。

でもなかなかうまくいかない時に、「まぁまぁ映画でも見て気晴らししよう」と夫が誘ってくれて一緒に家で鑑賞したのが「スパイダーマン3」でした。

たくさんの話が進行するけれど、最後で綺麗にまとまるのが面白いなと思い、それをきっかけにプロットの見直しがサクサク進みました。

やっぱりアウトプットだけじゃなくてインプットって大事だなぁと思った出来事です。

 

今回は主に3つの軸を考えて脚本を書きました。

「コスタ・ロッサに目をつけられ、店を潰されそうになるがみんなの力で回避する」というメインの軸。

「都に出かけたことがきっかけでリタと出会い、過去を思い出すと共に過去の謎が明らかになり、その真実を知る」という過去の軸。

「ノアがイザベラに惹かれていき、想いを伝え、イザベラは過去から一歩踏み出して受け止める」というロマンスの軸。

それぞれの軸に起承転結をつけ、

シーン1→メイン:起 

シーン2→恋:起 

シーン3→過去:起

シーン4→メイン:承 ・・・というように細分化して書いていきました。

 

実際に台詞におこす前に私は必ずプロットを細かく書いていきます。

元々やっていたことですが、去年Fromboot様の乙女ゲーム『ラブ・トリコローレ』のシナリオを書かせてもらった際の経験が生きたなぁと思っています。

クライアントさんにプロット段階でのOKをもらった後、それより詳しいアウトラインの提出を求められて書いたのですが、「これ使えるな…」と思ってそこから自分でもより詳細に書くようになりました。

こうするといざ台詞におこした時の「書けない…」が減るような気がしています。

外部の方とのお仕事は勉強になることが色々ありました。

 

こだわった所やお気に入りポイントは色々あります。入れたかった要素や演出としては

・キャラそれぞれの成長(特にアリシアとルイス)

・過去の謎が解けていく過程

・去って行ったキャラの置き土産(ニコラスの日記、暗号)

・イザベラの過去編での歌のフェードクロス(個人的にめちゃくちゃ気に入ってます)

・イザベラの劇中歌

…まだまだたくさんありますが、その内の1つ、劇中歌について次はお話します。

 

●劇中歌について

以前から「歌をボイスドラマの中に入れたい」というのはずっと思っていて、やるとしたらこの『JOKERS』の5話、イザベラの過去編しか無いなと思っていました。

最愛の恋人を亡くした直後で、それでも全てを賭けて役にのめり込み、歌う曲。

その劇中劇も少し心境とシンクロするような物語で、曲も物語調。

そんな曲を作りたいと思い、劇中歌『北の国の魔女』については、早い段階で動き出していました。

イザベラ役のkamkamさんの歌唱力については以前から存じていた(元々nanaの歌ってみたや声劇をいくつも聞いていた)ので、kamkamさんにお願いしてOKをいただき、私が劇中劇のあらすじと歌詞を書き上げ、某所で作曲・編曲の公開依頼を出させて頂きました。

そこでご提案頂いた中からお願いしたのが天籟楽奏堂さんでした。

こちらからお伝えしたイメージとしては

 

1番 怪しげな曲調、魔女っぽい感じ

2番 死んだ恋人を思うメロディアスな感じ

※弦楽器中心のクラシック、アコースティック。三拍子が好き

 

ぐらいと、あとイザベラの過去編脚本と劇中劇のあらすじをお渡ししただけなのですが、それであの楽曲のデモが届いた時は鳥肌がたって、文字書きとは思えないほど全く語彙力の無いご返信をしてしまったことをよく覚えています。

対応もとても丁寧で、また脚本を読んだ上での提案もして頂き、とても感謝しています。

ジャズアレンジ版も大好きで、間奏のピアノソロとかもう…もう!!

2曲のオリジナル曲は、本当に宝物になりました。

 

そしてボーカルを務めて下さった、イザベラ役のkamkamさん。

キャラで演じつつ歌うという難解な問題をクリアし、素晴らしい歌声を披露して下さいました。

『北の国の魔女』での堂々とした歌い方も大好きですし、エンディングテーマでの色気のある歌い方も大好きです。

もうちょっと追加する~~~~~~~~~~

 

●編集について

編集については4話から導入したRX8くんのおかげで下準備の整音(ホワイトノイズ、リップノイズの除去、音量合わせ)が早く終わり、更に3年半続けてきた企画ともなると使うSEやBGMも固定化してきたので、比較的サクサク進みました。

編集でのこだわりは色々ありますが、まずBGMについて。

 

4話編集後記ブログでもお伝えした通り、この『JOKERS』ではその話ごとにBGMのテイストを微妙に変えています。

1話はハープ、マリンバ、かわいい感じ。

2話はピアノ、バイオリン。

3話もピアノ、フルート、クラシカル。

4話はギター。それぞれのキャラに合わせています。

そして5話はハープ中心に優雅・クラシカルなものを選びつつ、随所に1話~4話の大事な場面で使ったBGMを再度使用しています。

例えば5話Part1ラストで、アリシアとルイスが夢の話をするシーンでは1話アリシア編のラストでアリシアがモノローグを語るシーンと同じBGMが。

5話Part3のイザベラの過去編、ラストのイザベラが泣き崩れるシーンでは、今までイザベラが過去に触れるシーンで何度も使ってきたBGMが使われています。

ちなみにこのPart3のラストシーンは自分でも編集気に入ってますねー。

私はBGMの山と台詞の山を一緒にしたい、BGMのこのメロディのこの音が台詞のここにきてほしい!と思う方なので、どこからBGMを開始すればその理想の演出になるのか、試行錯誤を重ねてあんな感じになりました。

編集OKと書いて下さっているフリーBGMはとてもありがたいので、場合によってはAメロを繰り返したり、自然にループさせたり、ただBGMを入れるだけではなく、編集しています。

この編集方法については大学の演劇部時代に勉強させてもらったものです。

当時役者と音響を掛け持ちしていたんですが、演出さんの「ここのメロディからここに飛んでほしい」「ここの台詞長いから2回繰り返して、この台詞が終わった時にサビに入るように編集して」などの要望に応えて何とかやってました。

懐かしいですねぇ、殺陣曲とかオープニング曲とかよくやってたなぁ…。

 

次にSEについて。

SEも最近結構意識して細かめに入れるようにしてます。

最近ハマってるのは「衣擦れの音」ですね、立ち上がった時、誰かに触れようとした時、動きを見せた時…脳内でそのシーンを思い描きながら、単調にならないよう、随所に入れるようにしてみました。

ちなみに1番SE入れを頑張ったのは間違いなく5話Part5の戦闘シーンです。

試しにいつもの感じで編集した5話Part4と、同じ7分間で編集画面を比べてみましょう。

まず5話Part4です。(使用:MixPad)

続いて5話Part5冒頭、最初から戦闘シーンに入るところです。

見よ!!この豆粒具合!!!笑

…冗談はさておき、BGMに加えてこんな感じで銃撃音のSE、衣擦れの音、足音、アタックの音、受ける音、ダメージ音、などなどいろーんなSEが詰め込まれ、音量を調節したり、左右に振ったりしています。

なお、今回めちゃくちゃお世話になったのが効果音素材集MOTION_SFXさんでした。

個人制作したボイスドラマ『加賀見山旧錦絵』の制作時に買ったんですが、JOKERSでも大活躍してくれて、多分ボイスドラマ作り続ける限りお世話になるだろうなと思ってます。

とにかくめちゃくちゃこだわった戦闘シーン、よければ何度でも聞いて欲しいです。

演者さんの演技にも合わせてSEとかも入れてたりします。

ちなみにこのパートで頑張りすぎて今は「もう当分戦闘シーンあるボイスドラマ書きたくない、みんな平和でいてほしい」と思ってます。

いつかまた作る気力が湧いたら作ります。笑

 

●最後に

と言うわけで、今回の5話でボイスドラマ『JOKERS』本編は完結です。

アプリnanaの募集コミュニティという小さな場所で生まれた企画が、こんなに多くの人々に聞いて頂ける作品になったことを、自分でも驚いています。

たくさん、たくさんの方達にお世話になってこの物語は完結しました。

キャストの方達、聞いて下さったリスナーの皆さま、ツイートを拡散してくださった方々、全ての方に感謝申し上げます。

 

このお話のテーマは何度でも出てきていますが、「人は何にでもなれる、変わることができる」ということです。

トランプのジョーカーのように、変幻自在に。

それはなりたい自分になること、理想を追い求めること、やりたいことをやること、前を向いて歩き出すと言うこと。

この先何年も経った後で、何か壁にぶつかることがあったとしても、ふとこのお話のどこかのシーンが思い出されたり、「ベラならこんな時何て言ってくれるかな」なんて考えたりして、誰かの背中を押せる物語であってほしいと願っています。

 

そして…最終パート公開後にお知らせした通り、もう一つの『JOKERS』として、『JOKERS-Side Pirates-』を制作予定です。

こちらのテーマは「はみ出し者たちの賛歌」という感じでしょうか。

裕福だった家を飛び出し、どこの海賊団でもトラブルメーカーだったゲイルと、

性は女性だけど時と場合によって男性にもなるというエリック/カレンと、

孤児院を抜け出してから裏の社会で生き抜いてきたユーリとアンリと、

妹を探すために道を外れて海賊になることを選んだノアと、

肌も髪も全てが真っ白という特異な身体に生まれたオルガが出会って、

それぞれの過去を思い出しながら、前へ進んでいく物語です。

絶賛執筆中です!15分ぐらいのが12話とかになるかな…?

新キャラいっぱい書いてますので、ご興味ある方は楽しみにしていてください。

どうぞこちらも、よろしくお願いいたします。

 

それではまた、JOKERS-Side Pirates-にてお会いしましょう。

 

5月2日 こひら みかん